発展の保証
植田 彩花
常葉大学附属菊川中学校3年
絵:静岡理工科大学 静岡デザイン専門学校 1年 佐藤明日香
二人分のコップをテーブルに出す。並々の熱いお茶を、眼前の私はすぐに飲み干してしまった。私の前に座るこの人は、信じたくないけれど、紛れもなく未来の私だった。何でも、最新テクノロジーとやらで過去に飛んできたらしい。そんな目の前の私が言う。 「にしても、お茶が美味しい。懐かしい味だわあ。」
私は思わず、懐かしい味ってと聞き返してしまった。未来の私が笑って答える。
「だって、もう未(こ)来(っち)じゃあこんなの作れないからさあ。こっちは飲み物とか全部総合栄養液だよ。あれまずいのにさあ。」
何でも、その総合なんとやらという液には人間が生きていくのに必要な栄養を全て詰め込んだ飲料物なんだと言う。未来ではそれまでの食料が全て栽培などできなくなってしまっ たので、そうしているのだとか。現代でも未来でも自然関連はロクなことになってないが、未来では雑草の一本すら生えないほど土壌管理されているらしいので、未来よりはまだマシなのかもしれない。かく言うこの土地も、 今ではゴミだらけで町中腐臭まみれだ。
「なのに、カラスは少ないね。」
未来の私が尋ねてくる。
「ほとんど死んじゃったからなあ。」
というか、未来から来ているのにそんなことも知らないのかと苦笑した。でも確かに、生まれて初めてそんな事を意識したかもしれない。未来の私に、他にどんな動物がいなくなったかきかれたので調べてみると、ゴリラ、コアラ、ラッコ、ウサギ、カブトガニ、マグロなんかも絶滅していた。詳しい種類は知らないが。結構減ったねえと画面を見つめる。
温いお茶を一口すすると、まだこの星でやっていけるような心地がした。無論このお茶も、農薬まみれで本当は飲めたものではないが。
ふと、未来の私が空を見上げた。つられて 見ると、空は黒色に染まっていた。時計は十八時を指している。予報だと、この後はたしか雨が降る。
「流石にこの服には耐性ないし、体が溶けたらまずいから」
そうして、未来の私はまた遊びに来るとつけ加えてから帰っていった。私は私が残して帰ったコップを、手袋をつけた手で洗いながら、 来年最初の日が訪れるのを待っていた。カウントダウンは始まっていて、すぐに次の年の日が来た。これで今日から晴れて二〇三九年だ。生憎お天気は酸性雨だが。来年になってもオリンピックもないし、きっと今年も特にすることはない。そこで私は思いついた。
「移星保険、入っておこうかな。」