
絵:静岡県立清水南高等学校1年 堀尾優嬉乃
悪魔のチケット
富士市立吉原第三中学校3年 廣瀬 萌果
僕は逃げる。しのびよる影から逃れるために。
僕はこの山に住む熊。僕の住む山に突然起こった闇の世界を紹介したい。
いつごろだったか、急に周囲の木々が倒れたんだ。そのうちの数本は僕のお気に入りのご飯があったのに。しかもその木々はどこかに消えてしまった。夢であることを願うことしかできなかった。後に友達の鳥に聞くと、
「あれは人間の仕業だよ。私たちのご飯を盗んでいくの。」
と教えてくれた。
(にんげん…?)
僕はまだ“にんげん”という悪魔の存在を知らなかった。
さらに時が経ち、また人間が森林を破壊していった。その頃には僕の住む山は元の五分の一ほどになってしまった。風の噂によると切られた木は家になることがあるらしい。それも、土地は伐採した所なんだって。
そのうちお腹も空いてきた。ご飯が無いから満腹になるのは夢のまた夢。冬になっても冬眠なんてできるわけがないし、人間はやってくるし。平和な日なんて来なかった。仲間の熊の数はどんどん減っていく。なんでも、山から下りて村や町へ行き、ご飯を探すらしい。人間に見つかり猟銃や麻酔銃、箱わなを使われた熊もいるそうだ。
今日、僕は勇気をふりしぼって山を下りてみた。大勢の仲間や友達から反対されたが、
「生きるためにはご飯が必要なんだ。」
と一点張りをして何とかここまで来た。まだ町に踏み込んでいないのに足はガクガクとふるえた。
一歩ずつ踏み込む僕。美味しそうな匂いがしてたまらず走り出し、葉を食べた。昆虫も食べた。久しぶりにこんなに食べられて嬉しくなって小躍りする。心から
(あんなに反対しなくていいのに)
と思い、油断した。
人間だ。とりあえず逃げる。人間とわな、人の視線という影から。逃げて、逃げて、逃げて。しばらく逃げて疲れた僕は箱わなで捕まってしまった。
人間の森林伐採のせいで僕たち熊は山を下りるのに、迷惑そうな顔をして僕らを追い出し捕えにくる。人間は山で生きる生物のことを忘れているのか。お陰で頭数も減った。
自然を破壊し、その自然で生物を傷つけていく。自然はチケットのように人間に利用され、乗客である僕たちは日々脅かされて生きている。人間、人間以外の生物、自然という命を持つもの全てが共存できる平和な世の中になればいいのに。そう願わずにはいられない。