【入選】【本部奨励賞】見て見ぬふり

中学生の部 入選 本部奨励賞

見て見ぬふり

工藤 莉美

藤枝市立高洲中学校

broken image

絵:静岡県立清水南高等学校1年 小林音葉

 「静岡の海は綺麗だ」❘そう思っていた。

しかし、私は現実を知ってしまったのだ。

 今年のゴールデンウィークに、母と静波海水浴場に出かけた。海は家族連れやカップルで賑わっていた。久しぶりに海へ行き、自然の美しさを感じた。しかし車に乗り込もうとしたとき、私は目を疑った。砂浜に大量の空き缶や、プラスチック製のトレーが捨てられていたのだ。中には変形していたものも、一部が埋まっているものもあった。相当な期間放置されていたのだろう。私は戸惑いつつも、何もすることができなかった。

 ゴミを拾うべきだということは分かっていても、周囲からの視線が気になり拾えなかった。周りの人も、その放置されたゴミを見ては見ぬふりをし、そのまま通り過ぎていく。 海洋汚染や海へのゴミ放棄が扱われているニュース番組などを確かに目にしたことはあったが、そんなにひどくはないだろう、大丈夫だろうと楽観視していた部分が大きかったのだ。海岸に捨てられたゴミを見たときにすぐに考えることはできなかったが、海から去ってから、ゴミを拾わなかった自分になんだかモヤモヤしていた。

 もしそのゴミが海の中に入って、魚が食べてしまったら?粉々になって、海全体がもっと汚れてしまったら?そう考えるごとに後悔が大きくなっていく。その魚は死んでしまうのかもしれない。負の連鎖が広がり、海中の生物が少なくなってしまうのかもしれない。

 それから二か月ほどが経ったある日、学校の家庭科の時間に話し合いをした。私に振り分けられた問題が、なんと「プラスチックごみ問題」だったのだ。ヒントカードには、網に絡まったウミガメや、海岸に打ち上げられたゴミなどの写真が印刷されていた。私はそのカードを見て、ゴールデンウィークの静波の海を思い出してしまった。危機感がもっと 強くなった。

 私も含め、「良くないことだ」と分かっていても全くゴミを拾わない人たち。そして、

「少しぐらいならいい」と考え、海岸に平気でゴミを捨てる人たち。それは、海を壊し、 奇跡の星である地球を壊している人たちだ。

 「誰かが拾ってくれるだろう」という他人事のような考えを多くの人が持っているから、 誰も拾わずにゴミだけが蓄積され、自分たちの生活まで壊されていく。海に限らず、道路

や水田などでもそうだ。

 自分の環境への意識が十分とは到底言えないものだったのだと自覚した。どの生物も傷つかずに暮らせるように、一人の地球の住民として意識を高めていきたい。そして、日頃から地球への影響を考えて生活していきたい、そう強く思った。